100円ショップ

流石に、10月下旬ともなると風は冷たくもう残暑の名残も感じられず、むしろ肌寒い。
昨日と今日の朝の風雨は正にそんな秋深い季節を味あわせてくれた。
いつも駅から会社まで、天気の良い日は歩く事にしている。
土日だけ幾ら歩き回っても、普段の日に殆ど歩かないのでは何にもならない。
バス代も浮くし、健康にも良いからと、、、。


だが、今日は雨である。歩くにしても雨だから傘が必要だ。
しかし雨の日は傘が嵩張るので、持ち運びが不便である。
従って大雨注意報でもない限り、折りたたみ傘と成る。
先日まで使用していた安物の折りたたみ傘は既に御用済みとなり、ゴミ箱へと消えた。
新しく購入した折りたたみ傘が今日の出番となった。
1~2週間程前に登戸まで散歩をした。
登戸でウインドーショッピングをしたのである。
ウインドーショッピングと言っても、大したものを見るわけじゃない。
家電製品に始まりパソコン、デジカメ、洋服、雑貨等等。
出来れば、店員さんがいない方が気が楽でユックリ楽しむことが出来る。
手にとって見ていると直に傍へやってきて、「如何ですか。お似合いですよ。」
なんていわれると、もうガッカリしてしまう。
フンフンと聴いていればそれで事は足りるのであろうが、
これと言って買いたい物があるわけではない俺にとっては、説明を聴いていること自体が苦痛である。
無視されるのも厭なものだが、あまり聞きたくない説明を聴くのも厭なものである。
こちらが尋ねてから、愛想の良い笑顔で対応して欲しいものである。
どうして、こんな具合に受け取るようになってしまったのであろうか。
ふと、思い出したことがある。
子供達が小学生の頃であった。
家族で近場のデパートに買い物へ行った。
当然主婦がリードし、その他の主夫と家族はゾロゾロと後をついていく。
何処にでも見かける風景である。
主婦は強しされど主夫は弱し?アレッ?こんなことわざあったかな?
一通りウインドーショッピングを楽しんだ主婦は、
今日のおかずを仕入れに地下の食品売り場へと足を運んだ。
また、その他の家族はゾロゾロと後をついていくのである。
食品売り場というと、必ず試食品が置いてあり、当然試食だから、
誰が口にしても良いものなのである。
丁度その場に元気の良い店員の声が聞こえてきた。
「安いよ、安いよ、美味しいキムチだよ。どうぞ試食をしてちょうだい!!」と。
その試食には俺の大好きなキムチが数種類並んでいた。
胡瓜のオイキムチ、大根のカクテキ、ごく普通の白菜のキムチとどれも美味しそうに並んでいて、
彼らがどうぞ私を食べてみて下さいと俺に話しかけてくる。
呼子の声につられて、オイキムチが一番美味しそうだったので、
爪楊枝で其れを口に運んで味をかみ締めた。
ウ~ン、美味しい。胡瓜のポリポリとした食感と、
線切りをした大根とにんじんがミックスして口中で程よい甘さと辛さが絡み合う。
これは酒のツマミにも成るなと、思った瞬間「ヘイッ、毎度~有難うございます。幾ら包みますか?」と、
威勢の良い声が、突然耳に響いた。
その、瞬間「ウ~ン500g」と、答えてしまった。
返事をしてから、これはマズイ!と思って助けを求めて主婦の顔を見ても、その横顔は当然知らん振り。
どうぞ、ご自分でお支払いをして下さい、と言う事であろうか。トホホ。
情けない表情をしながらやむを得ず小遣いから代金を払ったのは当然の成り行きとなった。
代金を払ってから、息子が俺に言った。
「あの小父ちゃんの方がお父さんより一本上手だね。」と。
小学校低学年の息子は親父がキムチを買わされた事をちゃんと理解していたのである。
エーッツと愕然とした。
しかし「いや、違うよ、美味しかったから、皆で食べようと思って買ったんだよと。」意地を張ってみた。
息子は更に続ける「じゃ、このキムチは皆で食べるんだね。」またしても、今度は息子に一本取られた。
やられた~!!
結局俺のお酒のおつまみではなく、夕食では「このオイキムチ美味しいね。」と、
皆満足して食べたのである。
この時から、店員に声を掛けられても、無視をするに限る、
出来れば声を掛けられたくないと思い始めたのかも知れない。ガハハ。
話は登戸でのウインドーショッピングに戻るが、有る一角に100円ショッピングと言うエリアを発見した。
100円だから大したものは売っていないだろうと、何気なくその中へと入っていった。
100円のものしか売っていないから、店員さんもお客さんにいちいち商品の説明なんかしていない。
俺は嬉しくなった。これなら、気兼ねなくウインドーショッピングが出来ると安心をした。
たかが100円されど100円、今まで100円を馬鹿にしていた事が恥ずかしく思われた。
結構使えるものが置いてあるではないか。
俺が商品価値を理解していないところもあるかもしれないが、
食器が100円、お鍋が100円、刺身包丁が100円、靴ヘラが100円、
暖簾が100円、脱臭材が100円等等。
我が家には刺身包丁など置いていない、普通の包丁でカツオやマグロを切っていた。
これは是非欲しい品物である。でも、少し不安になったので店員さんに「これ100円?」と、
尋ねると「別な値札が付いていないものは全部100円です。」と言われて安心をした。
どうせ刺身を捌くのは俺だからと刺身包丁を購入した。他に何点か買ったのだが、
ハタと折りたたみ傘の事を思いだした。
そうだ、どうしても折りたたみ傘が欲しい。
多少高くても好いや。
そう思って店員さんに聞いてみると、なんと折りたたみ傘も100円で売っているという事である。
喜び勇んで、当然購入した。全部で8点900円であった。
これは今日は良い買い物をしたと、一人満足をして家路に付いた。
刺身包丁の切れ味を確かめたい為に、スーパーでカツオを購入し、早速刺身にしてみた。
凄い!!切れ味最高である。これなら刺身が型崩れする事もない。大満足であった。
他の品物もそれなりに重宝していたが、傘だけは雨が降らないと使いようが無い。
随分と話が長くなってしまったが、今日やっとその傘を使う事が出来たのである。
此処からが今日の一番言いたい話である。
駅から雨の中を傘を差しながら歩いていた。
ちょっと小さめだが、100円にしてはまあまあだな。
バッグの中にも丁度納まったし、これで皆良い買い物をしたという事だな。ガッハッハ。。
と、喜びながら、駅から会社へと歩いて行ったのであった。
その時である。今までの雨風が急に強くなり、風が横から入ってきたのである。
突然、折りたたみ傘は空に向かって受け皿状態になり、俺の身体を雨の中に晒してしまった。
慌てて傘を一旦閉じてから、また開いたが、中々上手く収まらない。
2度3度と繰り返すうちに何とか元の状態に戻ったが、その間、雨で身体が濡れてしまった。
その後も時折吹き付ける強い風に何度も傘は空に向かって両手を一杯に広げてしまうのである。
先ほど迄のルンルン気分は何処かへすっかりと吹き飛んでしまい、
もうすっかりとしょげてしまい、心の中で叫んだ。
「アーッ、汗取りクリーニングで3000円も支払ったばかりのスーツがすっかり雨で濡れてしまったぞ~。」と。
安物買いの銭失いとはこの事であろうか。
100円の折りたたみ傘を購入たばっかりに、3000円分のクリーニング代が何処かへ吹き飛んだというお粗末なお話でした。
僅か100円のお金で身を持って本当に貴重な良い経験をしました。
と、此処は大見栄を張る事に致しましょう。ガハハハハ。
Mannbo-No5

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100円ショップ への1件のコメント

  1. suimei のコメント:

    昨日は傘をさした途端に、吹き飛ばされそうになるほどの強風でした。
    しかし、そのときは小雨だったので傘を閉じて郵便局へ歩きました。
    その後に買い物をして外にでるや激しい雨風。
    ビショビショにコートが濡れました。
    夜十時過ぎに帰宅した長男は強風で傘を飛ばされ、濡れ鼠状態。次男は靴下ビショビショ。
    ところで、きのうの台風のような暴風雨は何だったのでしょう。

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