目が覚めたその9

術後に見た「石」は直径1cmにもなる大きな物であった。この「石」が今迄何度も彼を苦しめていた物であったが、今となってはまるで「出来の悪い子供」を持った親のように、この「石」に愛着を感じていた。手術前迄は憎しみに満ちていた物が、何故こんなにも「愛しさ」を感じられるのか彼にもそれは不思議に思われた。もしかしたらその「石」は、彼のこの10年間の処世術の凝縮された結果だったのかもしれない。今彼は小ビンに入った濃茶色のツブツブの塊を懐かしそうに眺めながら医師の「他の場所にも出来易い」という言葉を思いだした。
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目が覚めたその9 への5件のフィードバック

  1. fujikun のコメント:

    無事、復活ですね。まずは一安心!!
    大事に静養してください。本日の幹事会はお任せを・・

  2. のコメント:

    お見舞い大変有難うございます。まだ復活と迄は行きませんがそれも時間の問題でしょう。本日の幹事会に私は出席出来ませんが、よろしくお願い致します。 「目が覚めた」はもう少し続きます。つれづれ日記を私の我儘で独占してしまい、皆様には大変ご迷惑を御掛け致しまして真に申し訳ないと存じております。もう少しの辛抱ですので最後まで私の我儘に御付き合いを頂きたいと存じます。よろしくお願い致します。

  3. のコメント:

    摘出手術をしたからと言って他の所にも石が出来る確率は決して下がるものではない。彼はこの言葉を聞いて「摘出手術」と一種に葬った「処世術」もいつか又甦るかもしれないと一抹の不安を覚えた。だが手術を終え二つの物を共に捨て去ったのは現実だ。今正に本当の未来に向けて一歩を踏み出した。それは「初心」を大事にし、何があっても諦めない信念の基に前へ前へと進む事である。そう考え彼は今のこの時間を甘受していた。術後の痛みが、その思いが本物かどうかを彼に問い掛けて確かめるかのように、腹部から胸にかけてズキンズキンと響き渡った。

  4. fujikun のコメント:

    在京白堊会・幹事会にO君と一緒に出席してきました。
    会長交代、役員、事務局刷新の人事原案が承認され
    総会に付議されることになりました。
    常任幹事に47卒からHP手伝いとして指名でfujikunが
    参画します。
    総会集客の状況は現在120名を超え、採算ボーダは
    何とかなりそうです。
    14日は、皆で元気な顔で集まりましょう!

  5. のコメント:

    病院の一角に設けられた小さな庭には、数種の桜の樹が植えられていた。ソメイヨシノは既に葉桜になっていたが、ビンク色した八重桜だけは、まだその美しさを誇らしげに咲かせていた。耳元ではラジオからあの名曲が流れてきた。FM横浜では名残惜しく「桜坂」の歌を流したのだ。♪♪♪~~愛と知っていたのに春はやってくるのに夢は今も夢のままで~♪♪♪君よずっと幸せに風にそっと歌うよ愛は今も愛のままで~♪♪♪ 彼はその歌を心地良く聞き入っていた。沈み行く西日を見つめる彼の目にはうっすらと光ものが浮かんでいるようにも見えた。 完

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