いつも唐突な話題ですみません。ある本を読んでいたら映画の事が書かれていた。
古き善き時代の成人男女の恋愛ものだが(1940年代頃の外国映画)、、、。
その映画には直接関係はしていないのだが、映画というと思い出すのが、子供の頃に観た映画である。
日本もの時代劇なら中村錦之助主演の一心太助・大川橋蔵主演の新吾十番勝負等、
現代ものなら片岡知恵蔵主演の七色仮面に多羅尾坂内等、いわゆる健全な作品ばかりを観てきた。
いわゆる勧善懲悪ものである。
ある日(確か日曜日だと思う)、父親と母親との3人で川徳に買い物に出かけた。
当時小学生の俺は近所のお寺で習字を習っていた。習っている仲間は殆どが同じクラスの連中であった。
もともと字が下手な俺を少しでも綺麗な字になるように教育してあげたいという親親心から始まったことのだが、
有る程度以上はやはり根本的な素質が欠如していたのか、なかなか伸び悩んでいた。
それでも再級から始まって10級9級・・・と3級位までは腕前が上がっていったようだ。
毎月習字のお手本が発刊されるのだが、最後のページの方に氏名と級位を書き連ねてあり、
自分の級位があがっていくのが楽しみで、お手本はそっちのけで、その結果だけを気にしていた。
まさか3級まで進級できると思っていなかったので、自慢げに両親にそのページを開いて見せ付けた。
それが思わぬ結果を導いてしまった。
俺にしてみれば親に対して自慢げに自分を表現できるだけの手段でしかなかったものが、
いつのまにか親自身の満足に変ってしまったことであった。
俺の両親は、喩え3級であっても字の下手な、息子が進級した事が大変嬉しかったのだろう。
そのような意味では3人兄弟の末弟は理屈ぬきで可愛かったのであろう。
と、ここまでは 普通の親なのである。
では、何が違うのか。此処からが、俺と皆の親との違いである。
と言うよりも、俺の親が、俺が思うに他の親と違うと言う事である。
明日に続く。
話は川徳に戻るが、当時の川徳は岩手銀行中ノ橋支店の斜め向かいに位置していた。
丁度今の中三盛岡店の場所である。
その息子の進級が大変嬉しかったらしい両親は、まず川徳で買い物をして、
それから川徳の食堂で親子3人が昼食をとる。
昼食と言っても、当時はラーメン大好き人間であった俺は当然ラーメンを注文した。
昔は野菜が大嫌いだったからシナチクと鳴門巻き、そして3枚程度の薄いチャーシューの載った質素なこのラーメンが当時は大好きであったのだ。
ラーメンを食べた後には必ずと言っていいほど、ソフトクリームを食べるのであったが、
当時はこんな時位しかソフトクリームなるものを口にすることは無かったので、これが本当に楽しみであった。
多分兄や姉にこの話をすると、お前は末っ子だから甘やかされていると一言文句を言われる事間違い無である。
さて、買い物も終わりラーメンも食べ、大好きなソフトクリームを食べて大満足な俺は、
気持ちも浮き浮き、足元も軽やかという感じであったに違いない。
これから家に帰ろうとしたその時、「皆で映画でも観に行こう」という話が持ち上がった。
へーッ今日はソフトクリームの他に映画までついてくるんだ。
またしても俺は大喜びである。
当時は確か10軒程の映画館が市内にはあったかと思うが早速映画館へと足を運んだ。
何処の映画館へ行くのかと思ったら当時の川徳からバスセンター前を通り盛岡八幡宮方向へと向かったのである。
その途中に映画館があったのだ。(多分、この辺の記憶は曖昧だが、、、。)
其処の映画館では邦画を上映中であったが、一目見て子供心にもこれはヤバイと直感した。
真っ白な法衣を身に纏った尼さんらしき女性が座敷で艶かしい肢体を斜めに投げ出し、片手で自分の身体を支えているポスターが貼ってあったのだ。
如何見ても普通の映画ではない事が直に判った。
当然子供でも既に興味がある世界ではあっても、子供が公然と観る映画ではない事が分かったのである。
ところが、其処の映画館の前で立ち止まり、「この映画でも観ようか」と言い出したのである。
母親も全く躊躇せずに、同意した。
エーッツ!こッこッこれは如何考えてもマズイ。
思わず「あそこに未成年者お断りって書いてあるよ」とだけ両親に言った。
ところが「未成年者お断りっていうのは17~18歳の少年が勉強をしないで映画ばかり観てはいけないから、
未成年者お断りって書いてあるんだ。お前はまだ小学生だから問題ないよ」と、答が返ってきた。
「???」親が何を言っているのか全く分からなかった。
未成年者お断りってそういう意味なの?と頭を捻りながら考えたが如何にも理屈が通らない。
「じゃ、入ろう」と言って、「大人2枚、子供1枚」と入場券を買おうとしたら、
入場券を売っているお姉さんが、「この映画は成人映画ですから、お子さんは入れませんよ。」と言ってきた。
やっぱりそうだよな。両親が間違っているよ。
これで両親も分かったろうと思ったのだが、「何で子供が入ってはいけないのだ。
子供に見せてはいけない映画っていうものがあるのか」凄い剣幕で、親父が文句を怒っているのである。
「子供のお祝いで今日は映画を見に来たのだから、何とか入らせてくれ」と、
まだ執拗にお姉さんを説得しているのである。
「?????」益々分からなくなってきた。
両親は一体何を考えていたのだろう。
俺はもうその場所を逃げ出したくなったのだが、親父はまだ頑張っている。
5分間くらいやりとりをしたと思うが、結局親父は身を引いた。
やっと親父も分かったのだなと、ホッと胸を撫で下ろしたのだが、
帰り際「全く筋の通らない、頑固な映画館だ。」と、まだ怒っていたのである。
「???????」結局成人映画ってなんだか分かっていなかったのは両親の方で、
子供ながらもそういう事に興味のあった俺の方が、成人映画ってどういうものか理解していた。
真面目一方の父親とその夫に仕えてきただけの母親には、そんな映画があることさえ知らなかったのだろう。
あまりにも世間を知らなかったのである。と俺は思いたい。
もし、あそこであのお姉さんが親父の要求に屈して、俺が映画館に入れたとしたら、、、。
此処から先は勝手に想像するしかないが、
肝心な場面に出くわしたら青い顔して黙ったまま映画館を出たのであろうか、
それとも初めから性教育のつもりで連れて行ったので平気で観ていたのか、
今では父親も他界し、母親も昔の事を忘れているから確認のしようが無い。
後の学生時代は土曜日の夜に銀映で日活ポルノを同級生のk君と一緒に見ることに成るのだが、
あの時のことを思い出すと、有る意味仄々と感じてしまうのは俺も年をとったという事であろう。
つい苦笑いをしてしまうのである。
Mannbo-No5