目が覚めた その7

ビンを自宅に持ち帰った彼は暫くの間手をつけずに置いていた。買ってはみたものの何やら怪しげで薄気味悪さも手伝いテーブルの上に置いたままになっていた。それが昨日友人と酒を飲み二日酔いでいろんな事を考えているうちに自分の「未来」はどんなものなのだろうかという気持ちになり、その怪しげな秘薬「未来」を飲んでみたのであった。彼はこの薬が「未来」でもなんでもなく、むしろただの眠り薬であり、彼の家に尋ねてきた友人に「睡眠薬自殺」と誤解をされ急遽病院に運ばれたのだと考えた。自分は騙されて睡眠薬を買わされたのだと。
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目が覚めた その7 への4件のフィードバック

  1. のコメント:

    「未来」という秘薬が有るわけがないのに手を出した自分が馬鹿であった。彼の傍には白衣を着た30代後半くらいの青年が立っていたがどうも医師のようである。医師が彼に声を掛けている。「気分は如何ですか、もう大丈夫ですよ」遠くの世界から聞こえてくるような気がした。彼は「ハイ」と小さな声で返事をしたのであった。ベッドの傍にはもう一人誰かがいるらしい。それが誰か彼には何となく判った。彼は安心して眠くなりまたウトウトした。目が覚めるとベッドの回りの雰囲気が先程と少し違っているような感じがしたが、さして気にも留めなかった。

  2. のコメント:

    暫くして目が覚めると先程の医師と替わって彼と同じ年代位の白衣をきた医師が立っていた。「手術は上手くいきましたよ。他の内臓と癒着はありませんでしたから、摘出手術は上手くいきました。今日は一切食事をしてはいけませんが明日からは流動食も摂っていいです。少し歩く事も練習をした方がいいですね。ではお大事に。」と言ってその医師は笑顔で帰って入った。彼はきょとんとした。今の医師は一体何を説明していたのか、一体何が起こったのか全く判らなかった。「摘出手術が上手く言った。」彼はその言葉の意味を直には理解出来なかった。

  3. のコメント:

    おぼろげながらも「摘出手術」と言う言葉に違和感を覚えなかった。以前に医師から説明を受けていたような気がした。彼は今の自分の状況を理解するのにそれ程時間は掛からなかった。やがて彼は全てを理解した。「未来」という薬も買っていない、当然睡眠薬を騙されて飲んだ事実もない、先程の医師もいなかった事に。そして昨日同期生と酒も飲んでいなかったのだ。彼は今確かに腹部に痛みを覚えていた。先ほどの少し太った医師が話していた事が現実であったのだ。彼は摘出手術を受ける為この病院に2週間以上も前から入院していたのである。

  4. のコメント:

    彼は手術を受けた。手術前に全身麻酔を受けるために背中に麻酔針を刺されチクッと痛みを覚えたのである。薬で眠っている3時間の間に彼は夢を見ていた。桜の咲く時期はお花見と称して飲み会を開催するのだが、今回は病気で入院中の為花見は出来なかった。当然会いたい仲間達と定例会を開催する事も出来ない。その悔しさからか、花見をしたい気持ちが手術中の夢の中でK駅の傍で飲み会を開かせたという事なのであろうか。生きる事の寂しさから「未来」という秘薬を購入しあたかもそれで「未来」が手に入ると夢の中で錯覚したのであろうか。

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